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廻る、廻る、世界は廻る。クルリクルリと、狂り狂りと。
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 A shadow toward the sunlightⅠ

 照りつける太陽が顔を灼き、眼が開けられない。
 致死量に至るほどの汗を流し、今にも倒れそうな私は、精神力だけで生きていた。
 そろそろ1年に一度の雨の日のはずだ。そう思いながらやっと此処まで生きてきた。
 私はもつれる足をなんとかこらえ、木の棒を支えにしながらひたすら歩いた。
 影は無い。いや、私の後ろに唯一ある。それだけだ。
 何度も見てきたのは死体。すでに骨だけであるが、私に恐怖心を植え付けるには十分な時間だった。
 そして今、ついに最後の時が来たようだ。
 視界が霞み、何もかもが幻のように見える。
 意識が遠のいていく――――。
 
 「NO.1007」
 そう呼ばれ、白一色の実験室に入っていったのを覚えている。
 「これより、対外栄養吸収実験Ⅰ適合手術を行う」
 醜い争いを繰り返し、壊れていった人類は最後の手段として、食物を食べなくても体内で栄養を確保することの出来る人間を造ろうとしたんだ。今や地球の2/3は砂漠。街があったとしても其処はすでに廃墟。
 生きている人間は裕福で"天国"への出入りを許可されていた者、運良く戦争から逃れていた者、そして私と同じように適合手術を受けた者だけとなってしまった。
 手術は激痛を伴うものだった。声にならない絶叫が四角い部屋を包み込み、私は暴れた。
 結果、手術は成功。半分気が狂っていた私はそこらにある手術道具で執刀医の胸を切り裂き、殺した。
  白い部屋から抜け出した私は、ひたすらに続く砂漠に足を向け、歩き出した。
 
  私には過去がない。覚えている名前は「NO.1007」だけだ。
  そこで私は自分に名前を付けた。"ネリ"という。
  人一人いない砂漠、なぜだか腹は減ってこないが自然と心に悲しみが満ちてくる。
  今までに味わったことの無い感情。溢れる気持ちに涙が出てきた。
  乾いた砂の上に一粒の雨が落ちた。
  1年に一度の雨、私が実験所をでた今日、その日は"神涙の日"だった。
  私の心を照らし合わせたような大粒の涙が、空から降ってきた。
  頬を流れ続けた涙はやがて止まり、私はまず街を目指した。
  あてなど無かった。だが、心のどこかで絶対に辿り着くという自信があった。

 To the next time

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流石・・・。
ついに出ましたね、小説。
お上手ですね。僕のトコにもチョイチョイ有るんですが、文がヤバイですからね。
「Ⅰ」と言う事は続きがあるんですか?
昏色 詩詩 2007/11/10(Sat)20:02:35 編集
無題という名の題
こんな終わり方はありませんよw
まだ書きます。
阿魂 2007/11/10(Sat)21:17:02 編集
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